MATH EXPOに参加して来ました
はじめに
このブログは 日曜数学 Advent Calendar 2025 の23日目の記事です。
2025年12月20日(土)に開催されたMATH EXPO 2025に参加して来ました。
https://peatix.com/event/4643188:
「数学をポップカルチャーに!」ということで、ライト層に如何にリーチするかが主題の会なのかなと思って参加しました。
講演のお話と、感想などを以下に書かせて頂きます。ご講演をお聞きした際のメモから書き起こしたものなので、記載ミスもあるかも知れませんので、ご留意ください。
「数学をもっとポップに!」加藤文元 (ZEN大学教授 東京工業大学名誉教授)
- フェルマー3次曲面の有理点
というものがあり、実例として
なども有名。
- マニン予想(の特別な場合)という予想がある。これは、
のうち絶対値の最大値をHとすると、cを定数として、サイズHの有理数の個数は、以下に漸近する
というものである。
数学をポップカルチャーに!とは?
専門家たちの文化の周辺に、数学を楽しみたい人たちの文化があるというものだと解釈しました。
- 数学コスプレ、数学聖地巡礼などがその例
- パリには数学者の名前のstreetがあるので、巡礼におすすめ
- ガロアの聖地巡礼をしたいが、決闘の場所が分からない。「ジャンティイーGentilly地区グラシェールGlaciereの沼の付近」まだは分かる。駅名にGentillyがあるが、かなり広い地域を指していたので分からなかった。古地図を参照した上で現代の地図を見ると、モンスリ公園の人工池付近ではないかと考えられたので、2010年に現地に向かった。
「笑わない数学「円周率」(Math Expo特別バージョン)」パンサー尾形(吉本興業タレント) with ハマちゃん(NHK笑わない数学アシスタント)
撮影もされていたので、後ほどメディアに登場するかも知れないので、ざっとだけ書きます。
- アルキメデス:内接、外接96角形の周長から3.14まで確定させた(小数点以下2桁)
- 関孝和の加速計算や、建部たかひろの多重加速計算:綴術算経(てつじゅつさんけい)では、それぞれ小数点以下12桁、40桁まで確定させることが出来ていた
- 円周率を求める方法として、「ビュフォンの針」という手法がある。一見、円とは関係さなそうなのが面白い。
円周率を玉突きで求める方法もある。G Galpin 2003。
kgの物体Aに、
kgの物体Bをぶつけて、物体Aが壁と物体Bに何回ぶつかるかを数えると、小数点以下n桁までの円周率が現れる。ただし、 宇宙全体を合わせてもたかだか
kgなので、大した桁数は求められない。
というメモがあったのですが、何の式か思い出せないので、ご存知の方はコメント下さい。
「情報幾何の誕生とその発展」甘利俊一(東京大学名誉教授 情報幾何学創始者)
以下のようなagendaで話されていましたが、どのようにして情報幾何を作るに至ったかリアルに話されていたので、詳細な記載は割愛させて下さい。
- 確率分布族と情報幾何:不変性
- 双対平坦空間: 凸解析とルジャンドル変換
- 統計的推論の情報幾何
- 意識の情報幾何
- 深層学習の情報幾何
統計的な推論に使いたいということで出来た。その後、物理や学習にも使われるようになった。
「ゲームは数学とAIで動いている!」三宅陽一郎 (東京大学生産技術研究所 特任教授
ゲームは数学とAIで出来ている。ゲームのAIは、メタAI、キャラクターAI、スパーシャルAIがある。
- 古くは、マップ生成には、rouge(1980)や、中点変異法、ブラウン運動から地形生成(1987)、最近はFarcry2ではDuniaエンジンなどが用いられている。
- ボードゲームの自動生成があり、遺伝的アルゴリズムが用いられている。
- AIで生成するというよりは、人が作ったものに揺らぎを与えるような使い方が良いのではないか。
- ドラクエ4のAIのインタビュー記事がある。
- Microsoftでは昔からゲームAIの研究を行っており、Drivatarでは、ユーザーから模倣学習を行っている。
- バイクゲームなどでは、Ray castでキャラの視界を計算して学習させている。
- 阪大の尾田欣也先生らによる特殊相対性理論の効果を取り入れたゲームがある。
- AIのゲームとしては、creaturesが1996、アストロノーカが1998で遺伝的アルゴリズムを用いている。
- 海外では、NPCの生活を眺めるゲームThe Simsの大きなコミュニティがある。
- AIにも限界効用逓減の法則を採用したりしている。
- MLでも、強化学習なら大量データは要らない。
- 昔の強化学習を用いたゲームでは、Q(s,a)関数の改善をしていたが、Deep mindはQの代わりに、ディープラーニングを用いることでAlpha Goを作った。Deep mindはDQNのさらなる発展として、アタリのゲーム57個に取り組み、最初は6つしか上手く行かなかったが、その後いろいろな技術を追加して解いた。
感想など
- ブンゲン先生の「数学をポップカルチャーに!」というお話は、自分も数学の研究者ではなく、数学を趣味として楽しむ日曜数学者の立場ですので、非常に共感するお話でした。
- 数学の聖地巡礼は、欧州などに行った際には個人的には巡りたいと思うものの、さすがにポップというにはハードルが高い気がしますので、日本で数学者の縁の地を巡るためのオススメコースを紹介したり、実際にそれらを巡る様子を紹介したりするのは良さそうに思いました。これは、趣味数学勢を集めて、ブラタモリみたいにポップな感じで実際にやりたいですね。高木貞治、岡潔、関孝和などなど。
- そして、NHKさんには、ぜひポップに数学の聖地巡礼を行う番組なんかを制作して頂けるとありがたいです。
おわりに
主催のご経歴から、ビジネス色の強いイベントになるのではないかと邪推しておりましたが、そんな事はなく、非常に楽める会でした。 久しぶりにtsujimotterさんとも話せましたし、笑わない数学の書籍版の編集の方や、昨年転職した知人(主催の方の友人らしい)とも会えたので良かったです。
私も以前は、関西日曜数学友の会の主催や、マスパーティーのスタッフなどをさせて頂いておりました。 それらの経験からしても、このように大勢の人を集めて行うイベントは、講演者へのアポイントメント、会場の確保、機材の準備、式次第の計画とリハーサル、資金の確保など、多くの準備が必要となりますし、その労力や資金源を考えると、何度も開催するのは非常に大変だと思いますが、今回のイベントは参加者から見れば成功していたと思えますし、ぜひとも次回の開催を希望しております。