非正則素数祭
非正則素数祭
いえーい。
さて、非正則素数とは何かから復習していきましょう。
非正則素数の定義
非正則素数について、引用文献[1]の8.11 円分体の整数環の中に説明がありました。
[1]のp293を引用させて頂きますと、以下の通りです。
何で非正則素数って言うの?
いきなり非正則素数と言われても、何が非正則(イレギュラー)なんじゃいワレェという話ですね。 それについても、[1]のp289の定理を引用して考えて行きます。
を奇素数で の類数が で割れないとする.このとき,方程式の整数解でがと互いに素であるものは存在しない.
みなさん馴染み深い方程式が出てきたと思います。世にいうフェルマーの最終定理(以下、FLT)*1です。この定理は正則素数ならば成り立つ。さらにがで割り切れない場合にFLTが成り立つことを示せば、正則素数についてはFLTが成立します。これはクンマーが1850年に示したそうです。*2そういう意味で、当時この定理を用いてFLTを示せていなかった素数が非正則素数ということですかね(ここらへんの解釈や表現がおかしければご指摘頂けると助かります)。
円分体 の類数を で割ってみる
それでは、円分体の類数とpを見てみましょう。
円分体の類数計算大変過ぎでは!?
これを計算するのはちょっと大変過ぎます。ということで、毎度お馴染み「オンライン整数列大辞典」から値を拝借します。こいつが正の整数と円分体 の類数の組を羅列したものです。*3
1から36までずっと<になっていますが、でになっていますので、これが最小の非正則素数になります。
割り算祭り
ここからは楽しい算数のお時間です。
さらに見ていくと、47、、、は695を割り切れませんね。+10した705なら割り切れたのに惜しい!次の候補は53ですが、これも4889/53=92あまり13なので割り切れない。
次は59に対して41241。ここで復習ですが「整数xで整数yを割り切れるとき、任意の整数cに対して、y+cx, y-cxのいずれもxで割り切れる」ので、41241+59 = 41300と割られる数を簡単にしてやると、413=59*7なので、これは59で割れることになります。
次の61と76301ですが、これも+10すると割り切れるので惜しいですが割り切れません。
次の67と853513ですが、これも67を足して853580にします。これは、、、諦めて素直に計算すると85358/67=1274と割り切れます。
というわけで、37, 59, 67は非正則素数なわけですね。
ベルヌーイ数を用いて計算しよう
ここでは類数の計算をせずに非正則素数であるか否かを判定する方法を考えます。
[1]のp293を引用させて頂きますと、以下の通りです。
が正則素数であるかどうかは,ベルヌーイ数によって判定できることが知られている.(中略) \begin{align} m \equiv n \not \equiv 0 \mod p-1 なら \frac{B_m}{m} \equiv \frac{B_n}{n} \mod p \end{align}
クンマーはが非正則素数であることと, が のどれかの分子を割ることが同値であることを,上の合同式を使って証明している."
ベルヌーイ数に関しては、以下のように漸化式で書けるので、類数を計算するよりは簡単に求まります。ここでは二項係数を表しています。
いや、いうて大変やん
ということで、またもや「オンライン整数列大辞典」からベルヌーイ数の分子の値を拝借します。
今度はこいつらを素因数分解してやります。
手計算でやっても良いんですが、ここはPythonでサクッと計算しました。
37がなかなか出てこない!までに出てくる必要があるのだが、かろうじて の分子で出てくる。結構ぎりぎりですね。この方法で最初に見つかる非正則素数を見てみると、5はまでに出て来ていないのでダメで、なんと691なんですね。
祭りのあと
今日は非正則素数歳になったということで、非正則素数について調べてみました。
非正則素数については、日曜数学者のtsujimotterさんがブログで取り上げていらっしゃるので、そちらもご覧ください。
なんと、非正則素数かどうかを判定するツールも提供されています。便利。
なお、私の年齢については明記いたしません。691歳ではないことだけは確かです。
おやすみなさい。
引用文献
[1] 整数論1初等整数論からp進数へ , 雪江明彦 著, 日本評論社 www.nippyo.co.jp
*1:[1]ではフェルマー予想(テイラー‐ワイルスの定理)と記載されています。フェルマーは証明を与えていないので、あくまで予想ということですね。
*2:Regular prime - Wikipedia 参照
*3:ちなみに、素数だけに限定した数列はこちら A055513 - OEIS